3月5日(土)
土曜の夕方、今回より日フィル横浜公演の定期会員にもなって、
大友直人さん指揮の英国特集。

ヴォーン=ウィリアムス/交響曲第2番ト長調「ロンドン交響曲」
~休憩~
エルガー/チェロ協奏曲
エルガー/行進曲「威風堂々」第1番ニ長調
指揮/大友直人
チェロ/菊地知也
コンサートマスター/扇谷泰朋

ヴォーン=ウイリアムスが「ロンドン交響曲」を書いた当時のロンドンは、「サロメ」の原作を書いたワイルドや、シャーロックホームズの中に出てくる世界でわかるように、犯罪や病気が蔓延している混沌とした状態にあった。


指揮者のアルバート・コーツが執筆した詳細かつ標題的な解釈があるので、紹介しましょう。
第一楽章   レントーアレグロ・リゾールト
父なるテムズ河は、重く灰色の暁のもとで、神秘に包まれながら静かにながれている。 早朝の静けさの中にビッグ・ベンが重々しく時刻を告げる。 突然場面はストランド地区のあさの賑わいと雑踏になる。 急ぐ通行人、新聞売りの声、 行商人。 ストランドを去ると川へ向かう小さな静かな小路へ出る。かつては栄えたアデルフィの街も今や薄暗い。 再びストランドへ戻ると陽気で騒がしい雑踏が迎える。 そこにはロンドンならではのユーモア、活発な精神と感傷が入り混じっている。
第二楽章 レント
11月も末の黄昏時。ブルームズベリーの街は深い霧に包まれている。 そこは薄汚れてはいるがノーブルな雰囲気に満ちている。 古き良き時代の残照のように。 静寂を破るのは街をパトロールする警官の足音だけ。 ブルームズベリーには悲劇的な匂いがする。 そこには貧しく暗い路地が多数ある。 パブの前では老いた辻音楽師がフィドルを弾いている。 遠くからはラヴェンダー売りの歌も聞こえてくる。 夕闇が迫っている。
第三楽章 スケルツォ (ノクチュルヌ) アレグロ・ヴィヴァーチェ
土曜日の深夜。 テンプル・エンバンクメントのベンチ。 対岸からは スラム街のざわめきが聞こえてくる。 通りには手押し車が連なり、揺らめく光のもと、ありとあらゆるものが売られている。 街角では行商の娘たちがハーモニカの伴奏でダンスを踊り、遠くでは笑い声や叫び声が聞こえる。 突然アコーデオンが鳴りだす。 これらの音は河を渡ってテンプル・エンバンクメントにいる私たちの耳にも届いてくる。 やがてロンドン特有の霧がスラム街の喧騒をはるか彼方へと追いやってしまう。
第四楽章 フィナーレ
失意のロンドン。 失業者のハンガー・マーチが聞こえてくる。打ちひしがれて飢えと寒さに痛めつけられた群衆の行進。 口笛を吹きながら仕事に行く人々を見つめる失業者。他人が食事する姿をただ見つめる飢えた男。 陽気な街の情景は、悩める者たちの視点から描かれた悪夢となる。 ふと気付くと、遠くからビッグ・ベンの鐘の音が再び聞こえてくる。
[エピローグ] 瞬間の沈黙。 広大で底知れぬロンドン。 シンフォニーは、冒頭と同じような雰囲気のなか終わる。 長きにわたって神秘とともに流れ続けるテムズ河がそこにはある。
朝、霧に包まれて明けるロンドンから夕方霧とともに暮れてゆくロンドンの一日が音で表わされます。
あまり演奏される機会がないヴォーン・ウイリアムズの交響曲ですが、大友マエストロのおかげで聞く機会に恵まれ、20世紀初めのロンドンに行ってみたような気持ちになります。
所々で、日本的な匂いがした様な気がしましたが?
エルガーの「チェロ協奏曲」は、日フィル団員の菊地さんがソロを務めて聴かせてくれました。
3月5日は菊地さんの誕生日だとか、壇上でプレゼントがありました。
最後は、有名なエルガーの行進曲「威風堂々」、「威風堂々」は、英語でPomp and Circumstance  これはシェークスピアの「オセロ」の一節から標題を得たらしいです。
アンコールは、同じヴォーン・ウイリアムズのグリーンスリーヴスによる幻想曲。
スマートな大友マエストロ、美人の夫人ともども英国調が似合っていました。
ちょっと電車でロンドンまで行ってきました、という感じでしょうか? 音楽って本当にいいですね。

ヴォーン=ウイリアムズ「ロンドン交響曲」
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