1月8日(金) 皆様、お正月はいかがお過ごしでしょうか? お正月中に、こんな本が出ていると知って取り寄せました。 2009年9月30日第1版発行 著者:白柳秀湖 解説:末國善己 編集:青木誠也 発行者:木 有 発行所:
あら まあ 大変!「駅夫日記」
夢二の絵、「駅夫日記」口絵より 目黒村 「駅夫日記」口絵より プラットホーム 「駅夫日記」最後の最後に蛇窪村が出てきて面白い。 でもでも嘘のような本当の話は、これからなんですね! 読み返される人は
白柳秀湖「駅夫日記」その25
夢二の絵は、セレナーデ 楽譜。 その二十五 品川の海はいま深い夜の靄(もや)に包まれて、愛宕山(あたごやま)に傾きかけたかすかな月の光が、さながら夢のように水の面を照している。水脈(みお)を警(いまし)める赤いランターン
白柳秀湖「駅夫日記」その24
夢二の絵は、春潮 楽譜。 小説は、蓮華、鷺草、きんぽうげ、鍬形草、高谷千代子の結婚。 その二十四 四月一日私はいよいよ小林浩平に伴われて門司へ立つのだ。三月十五日限り私は停車場(ステーション)をやめて、いろいろ旅の仕度に
白柳秀湖「駅夫日記」その23
夢二の絵は、春の鳥 口絵。 小説は、稲荷坂、木瓜の花と菫の花。 その二十三 二十歳(はたち)の春は来た。 停車場(ステーション)もいつの間にか改築される、山の手線の複線工事も大略(あらまし)出来上って、一月の十五日から客
白柳秀湖「駅夫日記」その22
夢二の絵は、暮笛 口絵。 その二十二 「いい成仏(じょうぶつ)をしろよ!」と小林の差図で工夫の一人がショーブルで土を小さい棺桶の上に落した。私はせめてもの心やりに小石を拾って穴に入れる。黙っていた一人がこんどは横合いから
白柳秀湖「駅夫日記」その21
夢二の絵は、楽譜「寄宿舎の古釣瓶」。 その二十一 少からず私の心を痛めた、足立駅長の辞職問題は、かの営業所長の切なる忠告で、来年の七月まで思いとまるということになって私はホッと一息した。 物思う身に秋は早くも暮れて、櫟林
白柳秀湖「駅夫日記」その20
夢二の絵は、楽譜「陽気な鍛冶屋」 表紙。 その二十 「今日の社会は大かた今僕が話したような状態(ありさま)で、ちょうどまた新しい昔の大名(だいみょう)が出来たようなものだ。昔の大名は領土を持っていて、百姓から自分勝手に取
白柳秀湖「駅夫日記」その19
夢二の絵は、ホームソング 表紙。 小説は、山の手線複線工事、恵比須麦酒。 その十九 その春のくれ、夏の初めから山の手線の複線工事が開始せられた。目黒停車場(ステーション)の掘割は全線を通じて最も大規模の難工事であった。小
蛇窪村って?
・・・おお、私はいつの間にか桐ヶ谷の火葬場の裏に立っていたのだ。森の梢(こずえ)には巨人が帽を脱いで首を出したように赤煉瓦(あかれんが)の煙筒が見えて、ほそほそと一たび高く静かな空に立ち上った煙は、また横にたなびいて傾く
白柳秀湖「駅夫日記」その18
夢二の絵は、歌劇「カルメン」ハバネラの歌表紙。 その十八 寂しい冬の日は暮れて、やわらかな春の光がまた武蔵野にめぐって来た。 ちょうど三月の末、麦酒(ビール)会社の岡につづいた桜の莟(つぼみ)が綻(ほころ)びそめたころ、
白柳秀湖「駅夫日記」その17
夢二の絵は、雑誌「新少女」さし絵。 小説は、恋について・・・。 その十七 その年も暮れて私は十九歳の春を迎えた。 停車場(ステーション)ではこのごろ鉄の火鉢に火を山のようにおこして、硝子(がらす)窓 を閉めきった狭い部屋